読書余滴  平成21年8月1日       戸張道也

「大不況には本を読む」 槁本 治著    中公新書ラクレ

文筆家槁本治氏は、独特の見方を展開。最終章で本の読み方を記述。好況の再来はなく、今は人間の生き方の方向を定めることが重要と下記のように述べています。

第1章 この不況はどのような不況なのか

1 解決は困難だが、解明はそう困難ではない大不況

この不況はどんな不況か
アメリカ発の金融危機の原因 オバマ大統領就任演説「強欲」
日本の経済危機 アメリカ人、借金、日本製品を買う 破錠
日本を中心にしてこの大不況を考える 「日本の立場」で考える
日本は変わった国 「まず外国人の考え方を頭に入れる」
「洞ヶ峠を決め込む」「右顧左眄」「カネですべてをすますエゴイスト」
「先進国」で「唯一」「工業製品を作って輸出して儲けている国」
日本という国の特異性
「優等生グループの一人」「ウサギ小屋に住む仕事中毒者」
経済大国日本と「先進国」の変貌
「自動車の生産台数で世界一」「世界一の経済大国」
「先進国」(米国等)は「日本が輸出する工業製品を買える豊かな国」で「人件費 の安い国に作らせる」て「中国に投資して分け前を得ればいい」の考え」がが 「金融危機」を生む。
「日本」は「欧米先進国に工業製品を輸出する先進国」で「中国にどう対処するのか」が問題。
「中国」は「世界の工場」。
世界経済のひそやかなる転換点
どうしてアメリカ人は、自分たちが必要とする自動車を作らなかったんだろうか
「日本車の方がいい」と判断し「別の選択肢」をとる。「日本製自動車の必要性」が生じる。そして「自分たちの作れるもの、作りたいものしか作らなかった」
「自由貿易」という、冨を増大させるルール
そして「こっちは買ってやってるんだから、そっちもこっちの売るものを買え」と「貿易に 関するルール」と、農産物の輸入自由化を主張し、アメリカ農産物の輸入促進させた。
「いるんだかいらないんだか分からないもの」を買って、経済を拡大させる
日本「内需拡大」を迫られた。 もし1985年に日本が経済の規模を縮小させていたら
「不況にする」は「好景気に浮かれず限度を知る」ことになる。
「景気がいい」は「人の営み」に破錠が生じる。
あきれるほどのいいことずくめ
「格差」、「中国製冷凍餃子の薬物混入事件」の発生。
「輸入木材のほうが安い」で輸入財が増え、日本の「山が壊れる」。
こいいう「危機」に対して自動車の輸出をやめたら「危機」に十分眼を向けられたもでは?
「円高」だって怖くなかった
「性能がいい」、「割高であっていい」、「その値段でも買おうと思う人だけが買え」。安心して内政に集中できる。
「自分のところで作れるものは、たとえ割高であっても、自分のところで作る」
「先進国が資本を投下して、人件費の安い発展途上国に作らせる」は「原則禁止」する。「もう作りすぎの輸出はやめた」
グローバリズムへの道(上に述べてようにはならずに)
内需の拡大と輸入枠の増加」を迫られ、「「本場(外国)のブランドもの」を買う
そしてアメリカは攻勢に出る
日本 「内需を拡大する 」し「本格的なヨーロッパ風にする」。
アメリカの攻勢は 投資とコンピュータ「通信事業」「ネット」で、「サブプライムローン」「金融工学」「多額の不良債権」となる。
「物」ではなく「考え方」が輸出される
アメリカ 「金融によって世界経済を支配する」「経済大国」である
「物としてのコンピュータ」IMBから中国レノボへ移る。
「コンピュータの内部に存在してコンピュータを機能させるもの」「アメリカ基準の思想を流通させるためのパイプ」マイクロソフト等の大勢力が攻勢に出る。
「日本人は遅れている」という日本人自身の思い込み
「余分なお金の運用の仕方」土地 株式市場「MBA 経済学博士」「失われた10年」「ネット社会」「IT」「禿鷹ファンド」の発生。
「頭のいいやつだけが勝てる」という錯覚
「データ」「一刻も早い状況分析」「実態経済」と「データだけの予測経済」
「予測」や「勝手な思い込み」は「いつか破錠」する。
データ至上主義者「データはそんなことを言っていない」と言う主張。
「データはわからないが冨には敏感」な人々「もう危ないよ」から「デットエンド」に。「頭のいいやつ」が「経済の実態を無視して複雑なお金の動かし方のできるやつ」「金融危機」「データ経済」の破錠となる。

二 この大不況はどのように収束されるのか

世界はそのとき「限界」を暗示していた
「経済大国日本への嫉妬」が「個人消費を増大させる」に。「経済発展」「限界」
「経済」だって「侵略」になる
「経済侵略」「輸出」「軍隊を行使しない戦争」
「寂れてしまった商店街」「経済発展を続ける日本のなかで寂れていった」「巨大スーパー」「便利」「拡大」「就職口」「小さな国」の「侵略」
それは「戦争」だったかもしれない
「日本が儲けたものを奪い取れ」にならず、「金融」という軍隊が「未来予測」を前提とした「市場」を開いてそこを戦場とした。「武力を行使しなかった第三次世界大戦の終焉」
「真犯人」が日本である可能性
日本は 「工業製品を作りだす」、 「物を作って売る」。
アメリカ 「豊かさ」を自演し、「大国としての面子」を持つ。
「働くしか能のないやつは働かせておけ」という考え方
「右肩上がりの時代は終わった」と言っているくせに
日本 「過剰な生産活動にブレーキをかける」をしないかった、「右肩上がりでな    い生き方」が見えなくなっていた」
「 もうそんなにいいことはない」「マイナス状況の中でどう生きるか」
「プラスにならない状況でどう生きるか」「不景気の中で生きる」
「中途半端な豊かさ」は、すべてをより危うくさせる
「豊かさに慣れてしまう」ということ
「これまでもなんとかなって来た」、「この先もなんとかなる」と言う考え
 「欲望は自身で抑えるもの」という発想がなければ「解放されてしかるべき欲望」が「誰かに抑え込まれている」という被害者の発想に変わって発言。欲求不満となって爆発し、「外」向けられる。「内」に向けられて「病む」。
豊かさが蓄積され、人件費一般が高騰し、「自国で物をつくる」が上手くいかなくなったとき、「生産拠点を人件費の安い地域に移す」をやってしまうのも「何とかなるかもしれない別の状況へ走る」考え方である。
大不況は「どこ」で収束されるのか
「いつ景気はそこを打つか」「景気は回復するか」「謎」。(著者のもわからない
「どこにもどるべきか」を考えてみる 私にはわからない
「新しい富裕層」を生み出したが「日本は格差社会になった」
「小泉構造改革」は「金持ちになりやすい立場の人達をさっさと豊かにして、残りはその余慶を待つ」「理論的には正しいのかも」
「どこに戻るべきか」「中途半端な豊かさ」は「妄想の中に存在する豊かさの再現」となるか?。「我々は、何を納得しうる生活水準とするか」は哲学、モラルの問題。
「右肩上がりの時代は終わったな」という認識も立派な進歩。
「昔にもどせばいい」というわけではない
「今はまず静養と治療が第一なんだから」「収束を考える」
大不況を収束させるための考え方
「意思」「この大不況が収束したら、我々はどのように生きるのかを考える」
我々は「景気」という外状況につられて、自ら考えることを放棄していた。
途方にくれる前に、まず「方向」を考える。それが「進歩」というものを可能にする人間のあり方で、だからこそ「大不況には本を読む」

第二章 人類の折り返し点
と続きます。